Oily Rag - The August 2026 Edition

Oily Rag - The August 2026 Edition

8月が9月へとゆっくり滑り込むころ、ひとつの章が閉じ、新しい扉が開いていく。
過去とこれから、そのあいだにある曖昧な時間の中で、古いアイデアは少しずつほどけ、新しい何かがふっと姿を現す。

今月、僕らの旅は東京へ。
FW26キャンペーンのため、チームはあらゆる光を追いかけた。ネオン、夜明け、街灯。その瞬間、その場所にしかない光を求めて。

一方、ホームでは、我らが「カーニング番人」ことJordan Hodgeが、いくつかの謎めいたウサギ穴へと潜り込む。そこから持ち帰ってきたのは、彼が最近読んだもの、聴いたもの、観たもの。今、彼の頭の中を占領している世界への、小さな入り口たちだ。

そしてアスファルトをはるかに離れた場所では、我らがHead of Workshop、Jeremy Tagandが砂漠へ。どこまでも続くダストと広い空の下、魂と向き合い、ときにはちょっとした人生の迷走も。

これは、そんな「移り変わりの途中」から、僕らが届ける今月の便り。

Until September,
Team Deus

1 ネオンと、その他の奇跡

東京は、どの時制にもすっと馴染む。
いまこの瞬間であり、ずっと昔からそうだったようでもあり、これから先も変わらないような場所。

鋭く尖った感覚。
弾けるような高揚感。
そして、雨に濡れたアスファルトにネオンが滲み、万華鏡のように街を彩っていく。

そこにあるのは、あらゆる所作に宿る、揺るぎない完璧主義。
東京という街は、奇妙なほど几帳面で、どこか執拗なリズムによって動いている。

高架下の小さな7席のカウンターに、肩を寄せ合うように座る。
目の前に運ばれてくるのは、ミシュランの星を持つ科学者さながらの執念と精密さで仕上げられた一杯のラーメン。

その外では、何千もの人々が、肩ひとつ触れることなく、まるでひとつの生命体のように歩いている。

これは、狂気じみた秩序が生み出す奇跡。
そして、完全に僕らを虜にする。

さまざまな意味で、東京はDEUSにとっての精神的な故郷なのだと思う。
文化、クラフト、そして静かな魔法を絶え間なく生み出し続ける、止まることのない街。

そのやり方は、東京にしかできないほど、独創的で、鮮やかだ。

EXPLORE FW26

#2 ウルルからアデレードへ:BMW Safari GS Enduro

旅は、ノーザンテリトリーのウルルから始まった。
広大なオーストラリアの大地、どこまでも続く赤土と果てしない空。その下に120人のライダーが集まった。

そこから道は南へ。目指すはアデレード。

旅の途中、Mount Dareは最も乾いた場所のひとつだった。
何もない場所の、ほんの小さなアウトポスト。ここまで来ると、遠く離れているという感覚が肌でわかる。そして、この国がどれほど大きいのかが、少しずつ身体に染み込んでくる。

時間さえ置き去りにしたような場所を、機械の小さな群れが静かに通り抜けていく。

いくつかのストップを経て、一行はFlinders Rangesへ。
荒々しく硬質だった砂漠の景色は、いつしか映画のワンシーンのような表情へと変わっていった。

太古から続く稜線。深く刻まれた谷。そして刻々と移ろう色彩。

アデレードへ向かう道の、その先に待っていたのは、旅の最後を飾る壮大な景色だった。

遠回りの南下は、いつしかそれ自体がひとつのリセットになっていた。

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#3 Reading, watching, listening - with Jordan Hodge

急がないということ。
世界の速度を少しだけ落とす、小さな習慣。

それは、簡単に消費されることを頑なに拒む、答えを決めないままの小さな儀式たち。

DEUSの「レイヤー卿」ことSenior Graphic Designer、Jordan Hodgeが続けているのは、そんな習慣だ。

さまざまなものに触れ、影響を受ける余白を、自分の中に残しておくために。

Reading

『A Short Stay in Hell』— Steven L. Peck
あるモルモン教徒の男が送り込まれたのは、一見するとそれほど恐ろしくない地獄。
そこから抜け出す唯一の方法は、ほぼ無限に続く巨大な図書館の中から「自分の人生の本」を見つけ出すこと。
シンプルな設定なのに、じわじわと効いてくる一冊。

『Yesteryear』— Caro Claire Burke
そう、女の子たちがみんな読んでる、あれです(笑)。
妻が読み終えたあとに僕も手に取ったんだけど、いや、これが実にいい。
あるインフルエンサーが目を覚ますと、自分の家族が不気味なそっくりさんに入れ替わっている。
巧妙な仕掛けと、鮮やかな「してやられた感」がたまらない。

『The Seven Moons of Malinda Almeida』— Shehan Karunatilaka
スリランカ内戦下を舞台にした物語。
戦場カメラマンが、幽霊のひしめく1990年代初頭のコロンボで、自らの死がもたらした余波を追っていく。
死者の側から見る戦争と、その先にあるものを描いた、奇妙で忘れがたい一冊。

Listening

doggone:「William」
まだアルバムは出てない? もしかしたら今年あたりに来るのかも。
謎めいた新顔、doggone。PrinceやMk.Geeの残響を感じさせるサウンドで、実はMk.Geeのサイドプロジェクトなんじゃないか、なんて噂まである。
80年代っぽいギターに鋭いシンセの差し込み、そこへザラついてグリッチしたドラム。
なんともクセになる一本。

Various Artists:「Bulgarian Folk Ensembles and Songs」
狭い音程のハーモニー、ドローン、そして西洋人の耳にはちょっと奇妙に聴こえる不思議な和音。
まずは「Gyore Dos」と「Kalimanku, Denku」をチェック。

Death Grips:「Government Plates」
運転中に聴くには、ちょっと危険なくらいの音楽。
「The Money Store」ほど取っつきやすくはないかもしれないけど、それでも刺さる曲はしっかりある。
アクセルを踏みたくなるタイプの一枚。

Watching

『Aftersun』(2022)
トルコの格安リゾートを舞台に、父と娘が一緒に過ごしながら、少しずつ距離を縮めていく。
Charlotte Wells監督の長編デビュー作で、Paul Mescalと、驚くほど才能に満ちた若手俳優Frankie Corioの演技がとにかく素晴らしい。
とにかく、めちゃくちゃ切ない。
オーストラリアならSBSで無料視聴できるよ!

『My Father's Shadow』(2025)
こちらも父と子の物語。しかも同じく長編監督デビュー作。
ただし舞台はガラリと変わって、1993年のナイジェリア大統領選挙危機に揺れる、混沌としたラゴス。
父と子という普遍的なテーマを、まったく違う熱量と場所から描いた一本。

『Tucci in Italy』(2025–26)
今年のはじめ、イタリアへ向かう飛行機の中で観て、旅への気分を盛り上げていたやつ。
以前の『Searching for Italy』よりも、もう少しフォーカスが絞られていて、レストランを巡るだけじゃなく、料理そのものや、人々の家の中へと深く入り込んでいく。
食と暮らし、その土地で生きる人々の距離感まで感じられるシリーズ。