Deus SR-E

Deus SR-E

シドニーのキャンパーダウンに最初の店舗を開き、オーストラリアの市場と世界の多様な文化に殴り込みをかけて15年。これまで本当に色々見てきたと言えるだろう。昔から何百台ものデウスSRが、単気筒の爽快な音を響かせながらショップを後にしていった。どれもオンリーワンの個性的な単車だが、「恐竜の絞りカス」を吸って、圧縮して、点火するという、4ストロークシンフォニーを奏でる部分はみんな同じだ。でも今日は違う。当然と思われた4スト神話が崩れ去ったのだ。

Out with the old 古いのを捨てて…SR-Eのストーリーはこうだ。2005年にデウスワークショップから送り出されたSRの第1号のオーナーであり、昔からの友人でもあるファーガスが、自分のカスタムSR500を更にコンバージョンしたいとチーフメカニックのジェレミーに相談を持ちかけてきた。象徴とも言える単気筒の名機を捨てて、交流モーターの生みの親、ニコラ・テスラの研究所も裸足で逃げ出す、通勤仕様の電動バイクにしてくれというものだった。電動化の世界にどっぷり浸かった我々は、エンジン、マフラー、そしてキャブを捨てることにした。むき出しのフレームになったところで、ミシェル率いるFonz Moto のチームに応援を要請して、フレーム内の限られた空間に収まるバッテリーとモーターのパッケージを探して設計するサポートをしてもらった。

In with the new 新しいのを入れて72V、3000Wのモーターと、カスタムの3.3kWhバッテリーに加え、コントローラーと新型のスロットルも取り寄せることができた。レーザーカッターで切り出したモーターのマウントの角度をうまく調整して、元々のエンジンの位置にバッテリーとモーターが来るようにしたことで、オリジナルのフレームマウントとチェーンドライブが使えるようになった。これで登録時の強度計算書も簡単に作成できる。新しい電子スロットルと回生ブレーキ(従来のクラッチレバー)も取り付けられ、Fonzの「博士」が各部のハーネスを繋げていき、テスト走行を開始したところ、軽量でトルクが下からあり、加速もスムーズという最高の組み合わせに仕上がったことが分かった。この構成で時速100km、航続距離も100kmぐらい走ることができる。

心臓移植が完了し、銅線でできたSRのあらたな血管に電流が流れるようになったので、仕上げのステップとして15年分のライディングで溜まった汚れを掃除することになった。シート下のコントローラーを隠すために新しいサイドカバーも制作し、燃料タンクは新たに鏡面仕上げになった。完成したバイクは有り余る俊敏性とリバースギヤを備えた唯一無二の仕上がりだ。我々も大満足で、近いうちにファーガスがこれにまたがってストリートを駆け回る様子が見られることを楽しみにしている。

Photos by Kenyon Batterson.