ル・バロン・ルージュ / デウス バリ カスタム
バイクをカスタムする理由は人それぞれ。たとえば、自分のバイク作りの腕前をアピールしたかったり、天気の良い週末に気の合う仲間とのツーリングをさらに気持ち良くするためだったり。またカスタムバイクを自分の分身のように考える人たちもいます。彼らはカスタムバイク製作、いやアイディアを練る段階から熱い熱い情熱を傾け、ファッションセンスはもちろん、自らの夢や欲望や、何から何まで投影し、雨の日も、雹の日も、晴れの日も金属と向き合うのです。
このマシンは、Deusバリに10年も通う常連が、自分自身のために新たな1ページを刻もうとカスタムを決意し、Le Baron Rouge(ル・バロン・ルージュ)と名付けたのでした。
Deusバリで完成したカスタムバイクを何台も見たことがあるそのオーナーも、同じベースバイクで何度もカスタムを行ったことがあるDeusバリのワークショップのBengkel Boysベンケルボーイズたちも、単なる外装類のカスタマイズは望んでいませんでした。そして感染症蔓延で世界が止まっていた間に、自分たちが造りたいバイクについてじっくりと考えました。作り手のエゴを排し、過去の作品とも違うもの。そしてライダーであるオーナーのニーズをより忠実に再現したものにしたいと考えていました。
そしてカスタムがスタートしました。Bengkel Boysベンケルボーイズは、
まずこのバイクの外装類をはじめとするパーツを取り外し、フレームの要らないステーを切り取り、不要な穴を埋めることから始めました。
カスタムのベースとなったヤマハ・スコーピオ225のリアショックは、YSS製に変更。その赤いスプリングが、パーツを外してすっきりしたリア周りのアクセントになりました。さらにヤマハのモトクロッサー/YZ250用のスイングアームを移植して軽量化と剛性アップを図りました。リアフレームは細くシンプルにレイアウト。ダブルシートの後でループ加工で仕上げています。
ヤマハ・スコーピオ225のエンジンはタフなことで知られていますが、このエンジンは長い距離を走って疲れ切っていたので、エンジン外観のクリーンアップを含めてフルオーバーホールしました。その際にボアアップピストンを組み込んで排気量とパワーアップ。それに合わせキャブレターも30mm口径を大きくしたUma Racing製 PWKキャブレターもセットしました。またエキゾーストパイプも造り、地元で調達したサイレンサーとセットしています。
前後フェンダーは、アルミの板を叩いて曲げてデザイン。ヤマハ・バイソン用のフロントフォークと三つ叉をセットしプロテーパー製ファットバー(根元が太いバーハンドル)をセットしました。6インチのDaymaker 製LEDヘッドライトは、アルミで削り出したヘッドライトリングと合わせて存在感をアップ。また豆粒のように小さくて、でも昼間でも夜でも、どの角度からもバッチリ見えるウンカー類はKellermann製Atto Darkをセットしました。前後とも18インチのRossi製リムに、Shinko製 SR428タイヤを装着。スポークホイールのハブはヤマハ・スコーピオのオリジナルですが、リアディスクブレーキキットを追加し、フロントのPSM製大径ブレーキディスクは、新しいマウントを製作して装着しました。
このバイクは万人向けではないかもしれません。でも、それでいいんです。
このバイクを愛してくれる人はたった一人。
それは、毎日このバイクに乗ってくれるオーナーですから。