North Star Yamaha XT500
ヤマハ発動機が1970年代後半に発売した「SR」というバイクは、その後40年以上も作り続け、世界中にSRファンが存在するほど広く知られるモデルとなった。あ、SRの元となった「XT500」というオフロードバイクの存在も含めると、SRおよびXTのファンはさらに膨らみ、その歴史はより長くなります。
デウス・シドニーのチーフ・カスタムビルダーであるジェレミー・タガンと、その顧客であるフレッド・ノースも、ヤマハが造り上げた空冷単気筒エンジンを搭載した、バイクらしいバイクの大ファンであり、いつも“SR&XT”の話で盛り上がっていました。
あるとき二人は、もしXT500が今日発売されるとしたら、それはどんなバイクだろうという話で大いに盛り上がりました。そしてそれは、話だけにとどまらず、実際に造ってしまおうとなったのです。それが「North Star Yamaha XT500」というカスタムバイクの製作スタートの経緯です。
ジェレミーが最初に取り組んだのは、ショールームから飛び出したばかりのような車体を造り上げることでした。フロントにはヤマハのエンデューロモデル/WR450F用の新品フロントフォークを、リアにはカワサキのオフロードモデル/KLX250用のアルミ製スイングアームを用意しました。そしてフロントフォークのインナチューブにはDLCというコーティングを施して動きをよくして、アウターチューブはアルマイト処理してドレスアップ、フロントフォークの長さも少し短くして、そのなかにセットするバネや減衰力も調整しました。そして車体とフロントフォークを繋ぐ三角形のカタチをしたトップブリッジとアンダーブラケットはアルミブロックから削り出したのですが、その数値はXT500と同じにしました。そしてTracker製ファットバー(←これ、ハンドルのことね)は、Rizoma製クランプでトップブリッジにセットしています。リアサスペンションはYSS製ピギーバックショックユニットをXTの特性に合わせてセットアップしています。
足周りの強化とスタイルアップはまだまだ続きます。ブキャナン製リムに合わせ、ハブにはハーン製ビレットハブをチョイス。この組み合わせは、完璧でした。またジェレミーは、より扱いやすさと乗り心地を向上させるためにハブダンパーもセットしました。ハブとリムは、XT500のオリジナルカラーに合わせたアルマイト処理し、それにフラットトラックタイヤを装着しました。XT500が登場した1970年代年当時は、ドラムブレーキでもさほど問題にならなかったでしょうが、いまの交通事情を鑑みるとドラムブレーキでは心許ない。そこでフロントフォークと同じWR450F用油圧ディスクブレーキを前後に装着しました。
車体がまとまってきたので、ジェレミーはエンジンに取りかかります。ジェレミーは今回、オーストラリアのエンジンチューナーとして名高いカール・ベイティのエンジンチューニング・レシピにしたがって、エンジンのパフォーマンスと信頼性をアップすることにしました。そのレシピというのは、バランスを取りしたクランクに高圧縮ピストン、オーバーサイズのバルブに強化バルブスプリング、混合気を効率的にシリンダー内に送り込むためのフローチューンにハイカム、オイルポンプも発電系&点火も強化などなど。SR500用フライフォイールを新たにセットし、XSTART製のセルスタートKITも装着しました。吸気にはケイヒン製FCR39を装着。エアクリーナーボックスはXT500のスタンダードを流用しましたが、エアクリーナーにはK&N製をチョイスしています。排気系にはオリジナルのヘッダーにSCプロジェクト製サイレンサーを組み合わせました。
続いて外装類。XTのオリジナル・スタイリングから大きく離れたくなかったジェレミーは、オリジナルの外装類をそのまま使用。オリジナルペイントでリフレッシュしました。そしてリアフレームを少し短くしたり、リアフェンダーの取付位置を変えたりして、より軽快なエッセンスをプラス。シートも形状を変更するとともに、シート表皮にアルカンターラを採用するなど、スタイルアップも図っています。
フロントフェンダーは少し短くカットし、ドイツのカスタムビルダーJVBがデザインしたヘッドライトシュラウドでヘッドライトを覆い、フロントフェイスを引き締めています。メーターはモトガジェッド製、ヘッドライトはKOZO製、ウインカーはケラーマン製、ハンドル周りのスイッチ類はオリジナルを残しつつモトガジェット製mo.Switch Proも使用。非接触型デジタルロックシステムのモトガジェット製mo.lock FOBを使用し、モダンな操作感を造り上げています。
この「North Star」の製作がスタートしたのは、ヤマハがSRの製造をストップさせたとき。そう考えると製作期間は1年半以上ということになります。私たちは、オーナーのフレッドと協力して、この古くて新しいバイクを皆さんに紹介できることを、本当にうれしく思います。