未踏の領域へ - ゲン・トリル・トゥア レース タシクマラヤ大会への挑戦
デウス バリ インドネシア
ある土曜日の早朝、霧が立ち込めた湖と渓谷の中で目覚めを迎えた。辺りの静寂を引き裂く2ストロークバイクのエンジン音が、今日がレース当日であることを実感させる。
ジメジメとした雨季は雲と共に過ぎ去り、大地は乾き、そしてインドネシアにレースの季節がやってきた。雨季の間はバイクの仕事に専念し、その時を待ち続けたサンディ・マラウナだが、太陽の光が戻る頃には、仕事道具を片付けて、愛するレースへの準備は万全である。
3つの地区大会からなるGeng Tri Tua (GTT) | ゲン・トリル・トゥア レースの第一戦が、5月最初の週末に開催された。最初の開催地となったタシクマラヤは西ジャワの内陸都市で、海抜350メートル、バンドンから南東に120キロのところにある。サンディは2台のバイクを積んだバンに2人の仲間と共に乗り込み、200キロの道のりを走った。インドネシアでの悪路を経由する約8時間という長距離移動は、まさに過酷な旅を意味する。
レース名の「Geng Trill Tua |ゲン・トリル・トゥア 」は、インドネシア語で「古いオフロードバイクに乗ったギャング」という意味。スクーターの流行りに飲み込まれ、2ストロークや4ストロークバイクが時代遅れになってしまうまでは、「Geng Trill Tua」がインドネシアのあちこちに存在していた。そうして物置に放置されていたオフロードバイクだったが、しばらくすると「Geng Trill Tua」たちが再び現れ始め、オフロードバイクの人気は再加熱することに。インドネシア中で眠っていたオフロードバイクが目を覚まし、今ではレースが開催されるまでの人気を誇っている。最高の時代と言っていいだろう。
前日の下見でレース会場へ向かう。アスファルトの公道を抜け、湖を見下ろすことができる石がごろごろした道を進み、緑豊かなジャングルの中を蛇行しながら下って行く。木々を抜けるとすぐそこが、レース会場になっている。明日のレースに向けて、テントの設営や調整を終わらせた後は、参加者たちが広場の中央に集まり、新旧の友人たちで盛り上がりを見せていた。
土曜日の朝は早く、湖と渓谷は霧に満たされ、朝食の良い香りも漂う中、今日のレースへの期待感で会場は溢れていた。まるでレース開始を知らせる合図かのように、2ストロークバイクの始動音が響き渡った。
今回のトラックは、いたってありふれた感じのシンプルなコースで、それはかえって特別な印象を与えた。スタートラインは広くとってあったが、その先は細くなっていて、横に3台並ぶのは難しい。勾配の厳しい下り坂や、まるでプレッツェルのような急カーブといった、コース製作者が設けた数々の難所を抜ければ、スタート地点に戻ってくる。これを6周するのが今回のレース内容だ。大きなジャンプは少なそうだが、路面はまだ完全に乾いておらず、スリップが多発することが予想された。
当然のことだが、レースは消耗戦だ。ライダーもバイクも生き残ったものが勝つ。1日目は脱落するライダーが相次ぎ、ライダーが一人また一人と去っていく中、旧型バイクの故障も頻発した。
そうして日曜日には決勝が行われた。今回行われたGTTレースのクラスは3つ。人気種目の100cc 2ストローク・ビンテージ・クラスは、愛情を持ってレストアされた純正バイクのためのクラスで、Yamaha DT、Suzuki TS、Kawasaki KXなどがこのクラスに該当する。次のクラスは100cc FFAで、2ストロークであることに変わりはないが、アップグレードしたエンジンやサスペンションを備えたバイクが出場する。多種多様の、やり過ぎ感のあるバイクたちだが、これもまた悪くない。そして最後のクラスは4ストローク150 – 250 FAAクラスで、Honda XL、Kawasaki KLX、Honda TigerからYamaha Scorpioに至るまで、さまざまなバイクが出場し、アップグレードや改造されたエンジンに、会場中から歓声が沸いた。
最初の2つのクラスではポイント制が採用されていて、勝者が3大会ある今年のGTTレースの頂点に立つことになる。
日曜日の午後はあっという間に過ぎて、サンディは100cc 2ストローク・ビンテージ・クラスで4位、100cc FFAクラスで7位だった。最後のクラスは不戦勝だったが、マシントラブルが原因だったため、結果としてこのクラスの参加者全員に1位が与えられた。レースで最も名誉ある順位に違いはないが、順位よりもレースを求めるのがライダーだ。走らずには帰れない、そんな思いもあったことだろう。
次に待ち受けるセントラルジャワとバリの地区大会に胸躍らせながら、レースへの準備はまだまだ続く。
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