デウス エクス マキナ× BMW モトラッド:R 12の再解釈
ドイツのバイクメーカー/BMWの「GS」シリーズといえば、アドベンチャーバイクというカテゴリーを造ったことでも知られる有名なモデル。どんな条件の道路でも、長距離をいかに楽に、そして安全に走行するかってことに焦点を当てて徹底的に造り込まれ、それが40年以上にわたって進化し続けているんです。とまぁ、ここまではバイクメーカーが造るバイクの話。その進化って言葉をカスタムの世界に置き換えると、その方向は少しだけ違います。
BMWは「R12 G/S」という新型車を、まもなく世界中で販売します。その車両がオーストラリアに上陸するタイミングに合わせて、3人のカスタムバクビルダーに、「R12 G/S」と同じBMWのネオクラシックファミリーのスタンダードモデル「R12」の新解釈を表現するように、という依頼がありました。その3人とは、Engineer to Slidのニゲル・ペトリ、Ellaspede、そしてデウス・シドニーのチーフカスタムビルダーのジェレミー・タガンです。
デウス・シドニーの工房に「R12」がやって来たとき、ジェレミーはいつものように、バイクの周りをアチコチ歩き回って観察することからはじめました。ツールを持ってパーツを外してしまう前に、バイクが語りかけてくるのを待つのです。
そしてジェレミーは、こう語りました。
「フレームには、どことなく野性が宿っていて、制御不能な力強い何かを感じます。私の目的は、その何か強調することであり、隠すことではありません」と。
最初に変更したのは、機能的でありながら象徴的なものでした。エアクリーナーボックスの撤去です。その代わりに、空気をエンジンに送り込むフューエルインジェクションのスロットルボディに、2つのDNAフィルターをむき出しで配置。より多くの空気をエンジンに送り込めるようにしました。
しかしジェレミーのカスタムメニューは、単なるパフォーマンス追求ではありません。言ってみればそれは、機械とライフスタイルの対話なのです。そこでデウスで販売しているライディングジャケットを解体して、その生地を使ってシートを製作。ジャケットのどの部分を使うか、そのトリミングはデビッドがバッド・アース・トリム・カンパニーで行いました。反骨精神と優しさが絶妙に調和したデザインになりました。
金属製の燃料タンクとシートカウルに話を移しましょう。タンクとシートカウルは塗装を剥がし、細かな砂の粒を当てて表面を均すサンドブラスを施しました。そのサンドブラストを掛けた燃料タンクとシートカウルに、図柄を描くようにマスキングテープを張りめぐらせ、そのうえから粒子の大きさや種類が異なる砂の粒を用いて再度サンドブラスを施すと、塗装もしていないのに、くっきりと模様が浮かび上がったのです。燃料タンクの両サイドにデザインされていたBMWのマークは取外し、かわりに美しいブルーの、Perspexというアクリル樹脂の一種を使ったデウス・バッジに変更しました。
そこから「R12」はオフロードモードに舵を切りました。タイヤはミシュラン製アナキーワイルドというゴツゴツとしたオフロードテイストを採用。 YSS サスペンション製の、あらゆるセッティングが変えられるフルアジャスタブル仕様のリア・ショックユニットをセット。フロントフォークはスタンダードながら、それらの変更に合わせて調整しました。調製中にバラバラにしたフロントフォーク周りは、タンク周りと同じサンドブラスト処理を施して、スタイリングの統一感を高めました。ハンドルバーは3cmほど高くすることで、ステップに立つ、スタンディングというオフロードのライディングポジションにもフィットするようになりました。
ヘッドライトやテールライトはスタンダードのまま。ウインカーはケラーマン製の小型ユニットに変更。オイルクーラー脇に場所を移動しました。左右に張り出したエンジンのシリンダーの上にはコンパクトなフォグランプを追加。これはオフロードで鍛え上げられたG/Sの伝統へのオマージュであり、実用性とワイルドなスタイルを造り上げるのに貢献しました。
排気システムにも手を加えました。シリンダーから伸びるエキゾーストパイプはスタンダーのまま。しかし大きくて重い箱/触媒は取外し、2本のエキゾーストパイプを1本にまとめるYパイプを使って、SCプロジェクト製のサイレンサーを車体左側にセットしました。排気音は…イイ感じです。
この荒々しいサウンドは、厳しいオフロードで鍛え上げられたGSのDNAを表現しています。そして自由の象徴でもあります。スタンダードなロードスターだった「R12」を、最低限のカスタムで、荒ぶるアドベンチャーモデルに変貌させることに成功しました。さぁ、あとは荒野に出かけるだけです。
Trail Breaker - Part 2は こちら
制作 : Jeremy Tagand
写真: Cameron Rogers
日本語訳 : Tadashi Kono


